2017年4月7日金曜日

染井の桜の下で


今年は桜が遅いって皆が言うね。
東京ではお彼岸の頃に満開になるはずの
エドヒガンの枝垂桜の開花が遅れに遅れ、
そのせいで、ソメイヨシノと同時期に
お花見できるという幸運に恵まれた。

都心では「花見」ならぬ「人見」になる
くらい混雑するところが多い中
人影の少ない貴重な名所がある。
桜の代名詞、ソメイヨシノの
発祥の地・染井の地にある
染井霊園は、当たり前だけど
お墓だから、ひっそりとしている。

そこで、出会った風景。

ワタシら夫婦の前を
ベビーカーを押してのんびり
お花見散歩する母子づれが二組いた。
ママ友なんだろう、細い路地を
並んで歩いているので
追い越すなら、どちらか
道を開けてもらわなければならない。

まあ、いいや。
歩調を緩めて、なんとなく
後をついて歩くような形に。

すると、向こうから車椅子がやってきた。
90歳くらいの老婦人を載せ、
押しているのは、こちらも白髪の女性。
たぶん娘さんだと思う。
お青空と桜のコントラストを味わうように
見上げながらゆっくり散歩する二人。

すれ違うにはどちらか道を
ゆずらなければならないけど、
こちらの存在に気が付いていないかんじ。

突然、娘さんが車椅子を押すのをやめ
お婆ちゃんを追い越し前に出た。
タブレットを取りだし
満開のソメイヨシノの下で
記念撮影しようとしている。

その間、こちらの一団は立ち止まることに。
でも、素敵な光景だった。
車椅子のおばあちゃんは
もしかしたら、認知症かもしれないけど
桜の木陰で優しく微笑んでいる。

ママ友の一人が振り返ってワタシを見た。
目が「立ち止まってスミマセン、でも…」と
言っていた。
なので、ワタシも目で言い返した。
「わかってる。ゆっくり写真を撮ってもらおうよ」

知らない者同士が、無言で
老親子の記念撮影の様子を
じっと見守っている。
二度と訪れることのない宝石のようなひととき。
日本人って優しいなあ。
日本って、とてつもなく美しいなあ。
日本に生まれて良かったなあ。
そう思ったら、涙が落ちそうになった。

一週間の東京滞在から米子に帰ってみると
雨模様だけど、ちょうど満開。
これから花見の本番のようだ。
また美しい情景に出会えますように。


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