2017年1月22日日曜日

「かけら」公演 鳥の劇場にて


前から気になっていた鹿野町の「鳥の劇場」。

目黒大路さんが構成・演出・振付を担当した舞台
「かけら」を鑑賞した。


目黒大路さんは舞踏家でもあって、
昨年、淀江の大正蔵で「妖怪ショー」という
奇天烈な一人舞台を観て魅了された。
その時、公演のあとボランティアで舞台のばらしを手伝ったら、
今回の舞台作品の案内をくれたのだった。

今回の舞台は本人は制作に回って
出演者は世代の異なる4人の女性。

朝鮮学校に通う高校生、高校の美術教師、
50代のアマチュア声楽家、70代の元運動家が
入れ替わり登場し、それぞれ語りや舞踏などで、
身の上を自己表現し観客に披露する。

時に突拍子もない内容だったり、
身体表現だったりするので
てっきり目黒大路さんが作話した
フィクションなのかなと思ったら、そうではなかった。

4人の身の上は、ほとんど本人の
実体験を再構成しただけだという。

つまり、4人のアマチュア表現家の身の上を、
それぞれが舞台表現するだけ、という
恐ろしくシンプルな構成。

これが不思議な空気を作り出して面白かった。

観客は、登場人物の舞台表現を
芸として拍手していいのか、
演劇の一部として、
じっと静かになりゆきを見守るべきなのか
じつに宙ぶらりんな立場に置かれてしまう。

わたしたちの日常における演劇性や、
個々のコミュニケーションの危うさを突きつけられ
いろいろ考えさせられた、刺激的な時間だった。

う~ん。こんな「芸術性の高い」
ある意味「難解な作品」が
鑑賞できる「鳥の劇場」おそるべし。

米子から車で1時間半
鹿野の鳥の劇場スタジオは、
50人用意された客席はほぼ満員だった。
終演後、観客は満足そうに
出演者やスタッフと感想や
意見を交わす光景があった。


「鳥の劇場」は演出家で現在は芸術監督の
中島諒人(なかしままこと)さんが
2006年に旗揚げしたそうな。

東京で演劇活動をしていた
中島さんと仲間が、
中島さんの故郷である
鳥取へとUターン、Iターンし、
廃校になった鹿野町の幼稚園&小学校を
手作りでリノベーションして
劇場を作り上げたとか。

鳥の劇場の公演は今回の公演のように
現代社会へ向けたメッセージ性の高いものから、
子ども向けなども含めて
地域と一体となった様々なイベントもあり、
地域の文化拠点としての場づくり、
教育普及活動にも力を注いでいるようだ。

それもあってか劇場に足を運ぶ人は
地元や県内からだけでなく
県外、とおく海外からもふくめ
年間約9,000人にもなるという。

これは活動に理解をした
鹿野のひとたち、行政の協力なしには
ありえない事業だと思う。

むしろ地元の人たちの
惜しみない積極的な支援があってこそ
多くの演劇人が夢見る
劇団専従の生活を
10年にわたって成立させてきた
ということなんだろう。

まさに地域おこしの先験的な事例だ。
これからも注目していきたいなあ。

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