2017年4月25日火曜日

「だらず」の語源・続編


「ダラズ」「ダラ」とは米子地方の方言で
バカとかアホと同じく
愚か者という意味。
諸説あるけどバカもアホも
いずれも仏教由来という説が有力なので
「ダラズ」もそうではないか、
というワタシの推論を以前に書いた。
ダラズは陀羅尼坊主(だらにぼうず)
が短くなった呼び方だ、と。

その後、ワタシなりに研究がすすんだので(笑)
紹介しようと思う。
そげなダラズげな話、どげでもええわ!
と思う人以外、読んでください。

陀羅尼(だらに)とは、
サンスクリット語のダーラニーから来ていて
マントラや密教の真言、
呪術的な語句を陀羅尼(当て字)と呼ぶ。

日本では百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)が
なんと世界最古の印刷物(!)として有名

百万塔陀羅尼 <京都国立博物館蔵>

奈良時代に百万部も刷られ
塔の形をしたケース百万個の中に収納され、
奈良の当時の代表的な10か寺に
10万塔づつ配られ収められたそうな。

百万塔 <京都国立博物館>

1200年前、よくこれだけ精妙な木工細工を
百万個も作ったもんだ。
もちろん機械なんてない時代だから
まったく気の遠くなるような手作業だ。
いったいどれだけの職人を動員したんだろう。
世の安寧、護国を願って、国を挙げて成した
それはそれは大事業だったに違いない。

ということで、
「陀羅尼」は当時の日本人なら、
詳細は知らなくても、
存在だけなら誰もが知っていて、
都だけでなく、どんな田舎でも
話題にのぼる単語であったろう。
なんだか有難くて
ご利益のありそうなモノだったわけだ。

さて、とすると、なんで
バカにしたり、蔑む言葉として定着したのか。

奈良時代の記述「日本霊異記」に、
こんな場面が描かれている。

長者が旅の乞食僧を引き入れて
「法華経を講じてくれないか」と頼むと
乞食僧はこう答えた。
「とてもそういう学問は私にはありません
私はただ、般若陀羅尼だけをそらんじて
物乞いをして回っているだけです」
と恐縮したという。

つまり、陀羅尼が流行したことで、
それを口ずさんで修行の旅をする遊行僧が増えた。
それも教団に属せず、自己流で陀羅尼を唱える
私度僧が多かったようだ。
ハッキリ言えば物乞いが目的で、
租税や賦役を逃れるための
なんちゃって坊主。
官はこれを忌み嫌い、法律で禁止し、
民にも蔑むようにさせた。

こういった背景によって、
「この陀羅尼坊主!ダラズめ!」
という風に、蔑称として
使用されるようになったという風に
ワタシは推理する。

そして、京の都の時代になって、
僧侶が使う隠語として
バカ=サンスクリット語で
「痴、愚か」を意味する
莫迦」が流行し使用されるようになった。
これが後の当て字で馬鹿という表記に。

また、アホも「唖法」(あほう)という
言葉を忘れる修行をする行者を
そのように呼んだのが始まりとする説が有力。

そうだとすると、アホンダラ!は
唖法陀羅尼から来てるのかもしれない。

結論。ダラズもバカもアホも
仏教由来というより、
仏僧由来というのが
より真実に近い。




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